男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「勇敢で、公平で、とても頭のいいお方だ。小さい頃から神の子と呼ばれていた」

「たしかお年は二十五歳だと聞いたことがあるわ。お妃さまは?」


国王に即位したのは去年のこと。妃が十人いると聞いたことがある。しかし町では噂話でしかない。


「その通り。二十五歳だ。しかし残念ながらまだお妃さまを娶られていないのだ」

「町で十人いるって耳にしたわ」


 ミシェルは得意げに話す。そんな孫娘にロドルフは目尻を下げる。


「それは多いな。しかし容姿端麗で国王の妃になりたいという貴族の娘たちは数えきれないくらいるぞ。お! もうそろそろ着く」

 
馬車は水のある堀の石橋を渡り始めていた。

ミシェルは急に今まで感じたことのない緊張に襲われ、背筋をピンと張った。

石橋の先に大きな城門があり、両端に衛兵が立っている。その隣には衛兵小屋のような建物も見える。
 
馬車は一度止まり、ロドルフが窓から手を伸ばし通行書を見せると、再び動き出す。


「ミシェル、大丈夫だ。うまくいく」

「……うん。おじいちゃんも身体を大事にしてね。足の怪我なんだから動きすぎないで。お母さんをよろしく」


祖父がここを離れたら心細くなるのは目に見えてわかっている。祖父と離れる前から涙が出そうだ。
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