男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
そこへヴァ―ノンがやって来た。


「陛下」
 

ヴァ―ノンは頭を下げ、東屋の涼しい屋根のある中へ入った。そこでクロードの斜め前に座るミシェルを見て驚いたが表情には出さずに言葉を待つ。


「続けろ」

「パスカルさまが急遽、お戻りに。ただいまこちらへ挨拶に参られます」

「義兄上が?」


パスカルの動向を調べたのは今朝のことだ。


「ヴァ―ノン、西棟の裏を周ってフランツを私室へ送れ」


東西南北に尖塔を構える棟がある。北側に大門があり、すべての者はそこを通る。

建物を中心に美しい庭園があるが、この東屋は国王の私室がある南棟の奥側にある。日当たりのいい位置の庭園に。

クロードはフランツがパスカルと鉢合わせしないようにいつも使わない道を指示した。


「フランツ、ヴァ―ノンと一緒に戻れ」


ヴァ―ノンはなぜ遠回りをしてまで侍従見習いを送り届けなければならないのか、一瞬首を傾げそうになった。
 
突然戻れと命令が下され、ミシェルは意味がわからなく戸惑ったが、椅子から立ち上がった。


< 110 / 272 >

この作品をシェア

pagetop