男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
その時、にわかに南棟の入り口のほうが賑やかになった。

クロードはそちらに鋭い視線を向ける。


(遅かったか……)


義兄パスカルが数人の着飾った女性を引き連れてこちらへ来るのが見える。

パスカルは真紅のジュストコールにモスリンの繊細なレースのクラヴァットを身につけ、さながら夜会に出かけるような姿だ。茶色の髪は長く、後ろでひとつにリボンで結わかれている。
 
華美な装いはいつものこと。そして連れている五人は若い女性でやはり高価なドレスを纏い、優雅に歩いている貴族の娘だ。
 
その様子にミシェルはそちらのほうを見た。ミシェルは男性よりも隣にいる女性に目を見張った。


(あの女性……)
 

その時、ミシェルの頭からなにかがふんわりとかけられ視界が遮られる。よく見ようとしていた女性が見えなくなってしまった。


「えっ!?」


頭にかけられたそれへ手をやれば上質な生地。そこへクロードのよく知る香りが。


「ヴァ―ノン、連れていけ」

「はっ」


足元だけ見えるミシェルはなぜか大きな手に肘を掴まれ歩かされる。
 
そこへ見知らぬ男性の声が聞こえ、ヴァ―ノンが立ち止り必然的にミシェルも踏み出した足がそのままに。


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