男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「わが国王、このようなところで食事とはなかなかのものですな。王妃さまを思い出します」

「義兄上、ブルーニ領にまだいるのかと思っていましたよ。ヴァ―ノン、行け」
 

パスカルに深いお辞儀をしたヴァ―ノンにクロードは言う。


「ブノア騎士団長、久しぶりだな。国王の着衣を頭から被るその者は?」
 

パスカルは目ざとくヴァ―ノンから上着を被っているミシェルへと茶色の瞳を向ける。


「義兄上、気にする者ではありません。太陽でめまいを」
 

顔を隠したままのミシェルは不可解だった。めまいを起こしたわけではない。なにか理由があるのだろうと思い、ミシェルはひと言も話さないようにした。


「ブルーニ公、失礼いたします」
 

ヴァ―ノンは断り、ミシェルの肘を引っ張るように誘導して東屋から出た。
 
なぜブルーニ公の目を避けるように侍従見習いを連れ出させたのかヴァ―ノンは困惑していた。
 
いつものように大股で歩くヴァ―ノンにミシェルは必死に付いて行く。その速さに呼吸が乱れるが、息を吸い込むとジュストコールの甘さと爽やかな香りを大きく吸い込んでしまい心臓が乱れる。

南棟の建物の中に入り、東屋から視界が見えなくなると、引っ張っていた手が離される。


「もういいぞ」
 

ヴァ―ノンの声で、ミシェルは丁寧にクロードのジュストコールを取る。


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