男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「陛下、起床のお時間です」

ミシェルの目に美麗な寝顔を晒しているクロードが映る。


(もう……陛下、寝ている時も美しい……)
 

静かな寝息を立てて眠るクロードに、ミシェルの顔が熱くなる。
 
しかし声をかけているのに、クロードは目を覚まさない。


(どうしよう……無理に起こして、眠りを妨げたと怒られない……?)


「……陛下、具合でも悪いのでしょうか……? お時間でございますが……」
 

ミシェルはさらにベッドに近づき、クロードに顔を近づけて静かにもう一度声をかける。


「ん……」
 

クロードが目を閉じたまま小さく返事した次の瞬間、不意にたくましい腕が伸びて、ミシェルは引っ張られた。


「きゃっ!」
 

思わず女性らしい声を上げてしまった。


(き、聞こえていないよね……?)
 

胸の中で十字を切るミシェルだ。
 
手から逃れることが出来ずミシェルは布団の上に転がされ、クロードの腕に抱き込まれてしまっていた。


「陛下っ、寝ぼけておられるのですか?」
 

腕を離してもらおうと身じろぐも、いっこうに抱き込む力は緩まない。


(どうなってるの?)
 

背後から抱きしめられ、クロードの吐息が耳をくすぐる。その感覚にミシェルは身を震わせた。


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