男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「あ、あのっ」

「なんだ?」

「いつもおひとりでお着替えを……」
 

こんなことを言うのは侍従見習いとして失格だろう。しかし、男性の寝起きは双子の兄フランツしか見たことがないし、裸などまったくもって問題外だ。


「男のくせに、恥ずかしいのか?」

「い、いいえ! そ、そんなことないですが」
 

ミシェルは強く首を横に振った。
 
クロードにはミシェルの動揺が手に取ってわかり、心の中で楽しんでいた。


(しかし、そろそろからかうのはやめにしなければな)


「フランツ、カーテンを開けて出て行っていい」

「はいっ!」
 

お役御免になり、ミシェルは急いで窓辺に近寄り重いカーテンを開ける。そして寝室の入り口でクロードを見ないようにしてお辞儀をすると出て行った。

居間ではアベルがお茶の用意をしていた。


「陛下はお目覚めではなかったのかい?」

「は、はい……」
 

抱き込まれた時のことを思うと、顔から火が出そうなくらい熱くなっていく。


「……今はお着替えになっておられます」
 

手伝わないことを叱られるだろうかと、おそるおそる口にした。しかし、アベルはなにも言わずにお茶の用意の続きを始めた。
 

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