男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
クロードにベッドに引き込まれて抱きしめられたことなど言えなかった。

少ししてクロードが居間に現れた。


「アベル、今日はまったく起きられなかった。最近疲れているようだ。毎日、フランツをつかわしてくれ」
 

アベルの横でミシェルの肩が跳ねる。


(毎日、起こしに来いと……おっしゃった……?)
 

ミシェルはギョッとなって、アベルを仰ぎ見る。


「かしこまりました。侍医に疲れがとれる薬を用意させましょうか?」

「いや、薬は必要ないだろう。もう少し様子をみてからでいい。フランツ、お茶をくれ」
 

アベルとクロードの会話では、ミシェルは毎日寝室へ行って起こす役目を仰せつかったようだ。


「フランツ、陛下にお持ちしてくれ」

「は、はい」


(さっきの寝室での出来事はたまたまよ。陛下は覚えていないみたいだし。毎日あんな風にされるわけない)
 
ミシェルはクロードのたくましい腕に抱かれたことを、頭の片隅に追いやって意識しないようにお茶を運んだ。


 
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