男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
クロードは政務の合間にもミシェルを側に置いた。

ミシェルにとって頭が痛いことで、正体がバレてしまいそうで怖かった。
 
その日の昼食後、南側に位置する国王専用の庭園を散歩するクロードにミシェルは付きそう。ミシェルの他に衛兵三人が少し離れた後ろから護衛する。
 
美しいバラが咲き誇る場所へ足を進めたクロ―ドにミシェルは付いて行く。

初めて見る黄色やピンク色などの色とりどりのバラにミシェルは感嘆の声を上げた。
 
しかし男ならそれほど感銘を受けずにいるはず。ミシェルはなるべく無関心に装いクロードの後ろを歩く。
 
その時、クロードが立ち止り振り返る。黒い宝石のような瞳が空色の瞳を捉える。


「フランツ、隣を歩け」

「と、隣でございますか……?」
 

国王の隣を歩くとは恐れ多い。しかも国王の私室ではなく、衛兵も近くにいるし、誰かに見られる可能性がある場所だ。
 
ミシェルは動けなかった。


「早く来いと言っているだろう?」


「そ、それは出来ません」
 

ミシェルはお叱りを覚悟で言った。
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