男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「来られないだと? 私が許すと言っているのだ」

「ですが……」

「つべこべ言わずに早く隣に来い」


クロードは痺れを切らしたように声を大きくし、ミシェルの腕を掴んで隣に立たせる。


(男性が好きなのだと知られたらお困りになるのは陛下なのに……)
 
と、ミシェルは筋違いな考えをして、小さなため息を漏らす。


「どうだ? このバラは他のよりも美しいだろう」
 

クロードは隣に立ったミシェルに目の前の薄紫のバラのビロードのような花びらに触れる。


「はい。このような色は初めて見ました。こんなにも美しいバラがあるんですね」
 

ついクロードの言葉に乗ってしまい、うっとりしてしまったミシェルはハッとなる。


「で、でも僕は特に興味は……男ですから」
 

言い訳するミシェルにクロードは鼻で笑う。


「興味がないふりをするな。花が好きな男もいる」
 

クロードは肩肘を張る娘が可愛くてしかたがない。


「綺麗なものは綺麗ですから……このバラたちは本当に美しいです」
 

ミシェルは滑らかなバラの花びらに触れたかったが我慢した。


(不用意なことを言って悟られないようにしなきゃ)

花が好きなことを見破られてしまったが、女であることはバレないように気を引き締めるミシェルだ。




< 122 / 272 >

この作品をシェア

pagetop