男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「……あの、陛下。お聞きしてもよろしいでしょうか……?」
 

以前から気になっていたことを聞く機会だった。


「なんだ? 言ってみろ」

「数日前にブルーニ公と一緒にいらした女性は奥方さまでしょうか?」


突然こんなことを言って不思議に思われなければいいなと思いながら聞いてみた。


「義兄上に妻はいない。一緒にいたのは町に住んでいる上流貴族の女性たちだ。義兄上の妻の座を狙っている」


(町に住んでいる上流貴族……やっぱり髪飾りを川に捨てた女性……)
 

そんなことを考えていると、クロードが眉根を寄せてミシェルの顔を覗き込むようにして見ていた。
 
ミシェルはびっくりして顔を引く。


「お前が気になるのは義兄上か? それともあの中の女か?」
 

クロードから離れたはずが、ふいに顎を持ち上げられて問いかけるような眼差しで見つめられる。
 
ミシェルの心臓がドクンドクンとうるさいくらいに暴れはじめる。


「ま、町で女性を見た気がしたのでお聞きしてみただけです。ありがとうございました」


(陛下の指先が……)


「義兄上には近づかないように」
 

困惑し挙動不審に目を泳がせるミシェルにクロードは真剣に言い渡した。


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