男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
クロードはバラ鑑賞を終えると、衛兵を従え直接執務室へ行った。ミシェルは国王の私室へ向かった。


「失礼します」
 

国王の居間へ入ったミシェルはそこにいると思ったアベルが見当たらなく首を傾げる。


「アベル侍従?」

「フランツ、談話室にいる」
 
談話室へ通じる扉は開かれており、そこからアベルの声が聞こえてきて、ミシェルは向かう。


「陛下はバラ園から執務室へ向かわれました」
 

ミシェルはアベルに報告したところで、手にしている深緑色のジュストコールに目を奪われる。


「なんて素敵な色味なのでしょう!」
 

深緑色のジュストコールは金糸で刺繍が施されている。


「これは六日後の王城の大広間で開かれる舞踏会で陛下がお召しになるものだよ。先ほど仕上がって来たんだ」
 

アベルは誇らしげに顔を緩ませる。


「素晴らしいです! この金糸の刺繍が実にエレガントですね」
 

ミシェルはこれを身につけたクロードに想像が膨らんでいく。
 
華やかなドレスのイヴォンヌとクロードが大広間で優雅に踊っているところだ。美しいイヴォンヌと、優艶なクロードは招待客をうっとりさせるだろう。

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