男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
翌朝、アベルとミシェルが国王の居間へ入ると、クロードがソファに座り書類を読んでいた。

また今朝も起こすのだと思っていたミシェルは、ホッとしたような残念な気持ちが交互にやって来る。


「陛下、おはようございます」
 

アベルはソファに腰を掛けているクロードに近づき、うやうやしく挨拶をする。その後ろで、ミシェルも頭を下げる。
 
クロードは書類を読むのに忙しそうだ。
 
アベルが淹れたお茶をミシェルはクロードの元へ運び、邪魔にならないように静かにテーブルの上へ置く。
 
お辞儀をして戻ろうとした時、クロードが書類から顔を上げた。


「フランツ、あとでバラ園へ行き、香りのいいバラを摘んでここに飾って欲しい」
 

昨日行ったバラ園へまた訪れたいと思っていたミシェルは笑顔になる。


「はい! かしこまりました!」
 

ミシェルはもう一度深く頭を下げた。



アベルに花瓶の大きさを確認したミシェルは意気揚々とバラ園へ向かった。

用意した籐で編まれた籠の中に庭師用のはさみが入っている。ミシェルが歩くたびに、籠の中のはさみがあちこち揺れ動く。

ミシェルの楽しい気分が現れているようだ。


(陛下は香りのいいバラって言っていたわね)
 





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