男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ぼ、僕の祖父は侍従長のロドルフ・ブロンダンでございます」


疑いをもたれる前にミシェルは祖父の名前を出した。


「なるほど。ブロンダンは今では白髪だが、そのように見事なシルバーブロンドだったな。あの男の髪色を覚えている」
 

尊大な態度が少し和らぐ。


「陛下の侍従見習いはずいぶん美少年だこと。パスカルさまそう思いませんこと?」

「そうだな、アリス。いつになく女のような美少年だ」
 

パスカルの茶色の目が見透かすようにミシェルを見つめる。


「本当に。女性だと言われても誰も疑いませんわ」
 

アリスは上品そうな声で笑う。
 
針の筵に立たされているようでミシェルの心臓はバクバク不規則に波打っていた。


「私の侍従になれば楽をさせてやるぞ」
 

ミシェルが気に入ったようなパスカルに、アリスは彼の腕に手を絡ませて気を引く。


「パスカルさま、行きましょう。私に珍しいバラを早く見せてくださいな」

「ああ。そうだったな。たしか向こうにあるはずだ」
 

パスカルは連れの美しい女性の腰に再び手を置くと、その場を立ち去った。その姿にミシェルは安堵のため息が口から漏れる。


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