男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
こんなに豪奢な陶器の花瓶やバラを生けたことがない。ミシェルがいつも生けていたのは小さな瓶に野花ばかりだ。


「私がやるより上手だよ」

「よかったです。生けたことがなかったので……」
 

フランツだったら本当のことだ。


「カーテンを付け替えたら、陛下のご昼食の用意をしよう」

「はい!」


絨毯が敷かれた床に膝立ちをしていたミシェルは立ち上がった。





「おや、手が傷だらけじゃないか」
 
ミシェルがテーブルにクロードの昼食を並べていると、アベルが気づき顔を顰める。


「平気です。これくらいなんともありません」

「あとで傷薬をあげよう」
 

そこへクロードが室内へ姿を見せ、ふたりの近くで足を止めた。


「傷薬とは?」
 

ミシェルは手を見られたくなくてもそっと後ろに隠そうとした。だが、クロードの視線はいち早く追い、手首が掴まれる。


「ああっ……」
 

両手を上げられたミシェルはいたたまれない気持ちで目を逸らす。

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