男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「いったいどうしたんだ!? 傷だらけじゃないか! ここは赤く腫れている!」

 
クロードはハッと息を呑む。


「バラのせいか?」

「ぼ、僕が不器用だったので。お見苦しいものを……申し訳ございません!」
 

ミシェルは頭を下げる。しかし、クロードに掴まれている手はどうすることも出来ずにいた。


「アベル、今すぐ侍医を呼べ!」

「か、かしこまりました」
 

アベルが慌てて出て行くと、ミシェルはソファのほうへ連れて行かれ座らされる。


「陛下のお食事が冷めてしまいます」
 

ミシェルがなにを言ってもクロードは聞いていない様子だ。クロードがまだ手首を掴んでいるのもミシェルは困惑している。


(これ以上見られたら女だってバレちゃう)


「へ、陛下、痛みはないので、大丈夫なんです」

「これで痛みがないだと? 嘘を吐くな。なぜ早く侍医に診せなかった!?」


クロードの顔が強張っている。


「いや、私のせいだな。すまない」

「ええっ? 陛下のせいではありません! わた、僕は陛下の侍従見習いでございます。なんなりとご用をお申し付けください」
 

ミシェルは侍従見習いだ。死ねと言われたら死ぬことも厭わないくらいでないと侍従の資格はない。

< 132 / 272 >

この作品をシェア

pagetop