男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「フランツ、こちらへ来て座れ」


侍医を見送ったミシェルは扉のところで控えていたのだが、クロードの命令にビクッと肩が跳ねる。


(座る……? 陛下が食事中、また座る……?)
 

躊躇していると、「なにをしている!? 早く来い!」といら立ちを見せる。
 
ミシェルは急いでテーブルに近づく。


「ぼうっと突っ立っているな。座れと言っただろう?」

「は、はい!」
 

ミシェルは示された前の椅子に「失礼いたします」と言って腰を下ろした。
 
私室にあるテーブルは四人掛けのもので、脚は凝った彫りが入っており美しい。
 
前回と同じようにミシェルは当惑しながらなにをすることもなく、クロードが食べ終わるまで座っていた。



 
その夜、ミシェルは布団の中で昼間の出来事を思い出していた。


(パスカルさまの目つきが気になる……私が女だとわかったみたいな……ううん。あれだけでわかるはずがない。それだったら陛下は気づいているはず。とにかく会わないように気をつけよう)
 

ふたりの男性に手首を掴まれたのだが、今思い返してドキドキと心臓が高鳴るのはクロードのほうだった。



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