男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
(昨日はちゃんと閉めたはずなのに……)


「申し訳ございません。昨日しっかり締めていなかったようです」
 

ミシェルは即座に扉の不備をクロードに謝る。


「かまわない。あの傷では注意力も散漫になるだろう」
 

クロードのなにげない優しさにミシェルの心が温かくなる。


「今後は気をつけます」
 

頭を下げるミシェルの頭にふんわりと手が置かれた。


(え……?)
 

驚くミシェルの横をクロードは通り過ぎ、色彩豊かなバラの道に足を進めていく。だが、少し行ったところで、クロードの足が止まった。
 
目線の先に年老いた侍従がおりバラの花だけを取って籠に入れていた。

すぐ近くに腕を身体の前で組み、侍従のやることを監視するようなパスカルがいた。
 
そこでパスカルがクロードに気づき、近づいて来た。


「陛下、素晴らしいバラ園のバラをありがとうございます」
 

パスカルは優雅にお辞儀をする。
 
ミシェルはバラの花だけが取られた苗を見て胸が痛くなった。そこの一角だけ見事に花だけがなくなっている。

< 136 / 272 >

この作品をシェア

pagetop