男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
その夜、ミシェルはアベルと夕食を食べていた。


「アベル侍従長、お聞きしたいことがあるのですが」
 

ミシェルは手に持っていたパンを置いて、改まった様子で聞く。


「聞きたいこととはいったいなんだい?」

「陛下とブルーニ公は仲がよくないのでしょうか?」

「……そうなのだが、この話を私たちが軽々しく口にするのは芳しくない。早く食べなさい。おいおいわかるはずだ」


 アベルのその言葉でふたりは確執があるとわかった。




舞踏会の当日。
 
この数日、アベルとミシェルが居間に入室すると、クロードはちゃんと起きていたが今日は姿がない。
 
確信犯であることはアベルにはわかっており、すぐさまミシェルに頼む。


「フランツ、起こしに行ってくれ」

「た、たまにはアベル侍従が……」
 

目上の人に言うのは躊躇われたが、また抱きしめられたりでもしたら心臓がもちそうにない。


「フランツ、君が行ってくれ」
 

アベルはもし自分が行った場合、クロードが怒るのは目に見えている。そう考えて、きっぱり言った。


(なんといっても陛下のお気に入りだからな)


「わかりました」
 

ミシェルはクロードの寝室へ向かった。やはりクロードはまだ眠っていた。


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