男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「陛下、朝でございます」


少し離れた場所から声をかける。しかし、横たわる身体はピクリともしない。


「お時間です。お目覚めになってください」
 

そろりベッドに近づく。その時、クロードがゆっくり気だるげに身体を起こした。


「カーテンを開けてくれ」
 

クロードの目覚めのよさにホッと安堵したミシェルだ。


「はいっ!」
 

ミシェルは窓辺に近づき、カーテンを開ける。太陽の光が寝室に差し込み、ミシェルは眩しさに目を瞬かせ、振り返った瞬間驚く。

すぐ後ろにクロードが立っていたのだ。気だるげな表情のクロードだ。
 
言葉を失くしていると、ミシェルの両手がいきなり持ち上げられた。


「へ、陛下っ?」

「傷はよくなったようだな」
 

クロードの英知ある瞳がミシェルの手を見つめている。その瞳にミシェルの心臓がドキドキ高鳴ってくる。


「はい。すぐにマティアス侍医に診せていただけたおかげです。ありがとうございます」
 

ミシェルは笑顔でお礼を口にした。クロードの手が離れ、ミシェルはお辞儀をして寝室を出ようと足を向ける。


「フランツ、これを手すきの時に読んでおけ」
 
分厚い本を手渡され、ミシェルはキョトンとなる。


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