男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
居間に戻ったミシェルは窓の側にいたアベルに声をかける。


「アベル侍従、陛下はすぐに来られます」
 

ミシェルはクロードから渡された本を扉に近いチェストの端に丁寧に置いた。


「フランツ、その本は?」

「陛下が侍従になるには必要だから読んでおくようにと。お借りしました」

「そうか。陛下が……」
 

アベルは感慨深げに頷く。


「これはアベル侍従も読まれたのですよね?」

「えっ? いや、まあ……そんなところだ。さあ、お茶を淹れよう」
 

アベルはフランツから離れ、お茶の用意を始めた。

 

その日、陽が落ち、城内にランプが至る所に灯された頃――。
 
王城に着飾った貴族たちが四頭立ての馬車に乗り次々と到着する。
 
ミシェルはクロードに付いて舞踏会に行くことは出来なかった。

がっかりはしたが、深緑色のジュストコールとズボン、艶やかなサテン生地のクラヴァット、膝までのグレーのブーツを着たエレガントで、凛々しい国王陛下の姿を見ることが出来たので所願は叶えられた。

スラリとした高身長に、男らしい肩幅、眉目秀麗のクロードは神々しく、招待客の老若男女問わず魅了することだろう。


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