男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
(おじいちゃんはどうやって侍従見習いを辞めさせるんだろう……ひと月だけと言っていた……)
 

クロードを騙していることが罪悪感いっぱいなのだが、あと少しで離れると思うと悲しい気持ちに襲われる。


(陛下は好きになってはいけない人……)

王城を出たら影ながら見守ることも出来ない遠い人だ。
 
まだ続く楽団の美しい音色を聴きながら物思いにふけっていたそこへ突然部屋の扉が開いた。
 
驚いて振り返った視線の先にパスカルが立っていた。

舞踏会に出席しているはずのパスカルはニヤニヤ笑いながら椅子から飛び上がるようにして立ったミシェルのほうへやって来る。


「ブ、ブルーニ公! いったい!? 舞踏会へご出席されているはずでは?」
 

嫌な予感に襲われたミシェルはじりっと後退する。
 
パスカルは艶やかな真紅の生地で作られたジュストコールを身につけており華やかである。パスカルは常に社交界の主役。
 
舞踏会も楽しんでいるはずなのだが、宴もたけなわな頃に、侍従見習いの部屋にいるとはミシェルには困惑どころか恐怖を感じていた。


「そんなに驚かなくてもいいだろう?」
 

パスカルは口元に笑みを浮かべる。


「侍従見習いの……、部屋になんのご用でしょうか……?」

「そんなこと、お嬢ちゃんがわかっているだろう?」

「えっ!?」


ミシェルは耳を疑った。


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