男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
ミシェルは急いで身体を起こし、シャツで露出を隠す。パスカルに乗られていた足が痺れたようにジンジンしている。


「……あなたの目的とはなんですか?」


パスカルは開いていた窓の観音扉を閉めて振り返る。人間味を感じさせない表情のパスカルにミシェルの心臓が跳ねる。


「国王陛下を殺せ」
 

冷たい声色だった。ミシェルは信じられない言葉に凍りついた。


「女だとクロードに知られれば、お前は一生牢獄か首をはねられるだろう。私は王位継承第二位だ。クロードが死んだあかつきには莫大な報酬をやろう。私の側室になりたければしてやる」

「な、なにを言っているんですか! 陛下を殺すことなど出来ません!」
 

ミシェルは大きく左右に首を振る。


「クックッ、ならばクロードを欺いたお前の祖父も死ぬまで牢獄、もしくは首切りだな」
 

ミシェルの心臓が鷲掴みにされたように痛んだ。


「そんな……祖父は関係ありません!」

「関係ない? お前をここに連れてきた張本人だろう? どういうつもりで侍従見習いをしている? そんなことはどうでもいいが」
 
ミシェルは身体の血がすべて下に移動する感覚に襲われた。


(どうしよう……)


「侍従見習いならばクロードが口にするものに毒を入れるのも簡単だろう」
 

パスカルはポケットから小さな小瓶を出した。


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