男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「お前はクロードを殺して大金を手にするしか道はない。いい条件だろう?」

「……考えさせてくれませんか?」

 
時間がほしかった。殺せと言われて「はい。殺します」などと平和に育ってきたミシェルに出来るわけがない。しかもミシェルが惹かれている国王陛下だ。


「却下だ! お前はやるしかない。一週間以内に殺せ」
 

ミシェルの口から小さな悲鳴が漏れる。
 
考える時間も与えられず、有無を言わさせないパスカルだった。


「わかったな。お前の家族の命はお前の手にかかっている。もちろんこの秘密を知ったお前も失敗や逃げれば命はない」
 

パスカルは念を押して部屋を出て行った。机の上にはパスカルが持っていた毒が入った小瓶が置かれていた。


「どうすればいいの……?」
 

小瓶に触れるのも怖い。ミシェルの身体が小刻みに震えている。愕然となったまま、その場に膝から頽れ、両手で顔を覆い泣き出した。

頭の中が真っ白で考えることも出来ずにしばらく泣いていた。
 
どのくらいの時間が経ったのだろうか、顔を上げてもう一度机の上の小瓶を見る。


(陛下を殺すことなんて出来ない。私がまいた種なのだから女だと告白し、陛下の命をブルーニ公が狙っていることを話そう)


期限は一週間。


(陛下に話す前になんとかして祖父にこのことを伝えて逃げてもらわなければならない)
 

その夜、ミシェルは寝ずにどうすれば祖父たちを助けられるか考えていた。


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