男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「舞踏会はいかがでしたか? 陛下は踊られるのですか?」


どんな様子なのかアベルの話からほんの少しでも垣間見たかった。


「とても華やかで素晴らしかったよ。陛下は残念ながら踊らなかったんだ。ダンスの名手でもあるのだが」
 

アベルはその理由について知っていたが、今ここで口にすることはできなかった。


「陛下はダンスがお上手なんですね」

「もちろんだ。お相手を軽やかにそして優雅に躍らせるんだよ」
 

ミシェルはクロードがダンスをしているところを一瞬だけ頭に浮かべた。


「イヴォンヌさまはいらっしゃらなかったのですか?」

「どうしてそう思うんだい?」


階段を上りながらアベルは少し後ろから付いてくるミシェルに尋ねる。


「お妃さまの第一候補ではないのですか? イヴォンヌさまとなら陛下も踊るのではないかと思ったのです」


(やっぱり陛下は男のほうが好き……?)
 

ミシェルはその考えを振り払うように小さく頭を左右に振る。


「まあそれはどうなるかわからないな。さて、今日の陛下のお茶はなににしようか」
 

アベルが曖昧に言った時、扉の両側に立つ衛兵が見えてきた。
 
ふたりは衛兵に扉を開けられ、陛下の私室へ入室する。


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