男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「フランツ、頼むよ」
 

居間にクロードの姿はなく、即座にアベルに頼まれたミシェルは寝室へ向かう。
 
扉を開けると、クロードはまだ横になっていた。


(舞踏会でお疲れなのかも……)
 

ミシェルはカーテンを開けながら声をかける。


「陛下、朝でございます」
 

今日も天気がいい。眩しい太陽の光が寝室に降り注ぐ。しかしクロードはピクリともしなかった。


「陛下、起きてください」
 

ミシェルは窓辺から離れ、ベッドに近づきすぎないよう立つ。いつもならここでクロードのくぐもった眠そうな声がするのだが。


「陛下……?」
 

昨晩のパスカルのクロードへの恨みが脳裏に蘇ると共に「死」の一文字に、ミシェルの心臓がドクッと跳ねた。
 
クロードはいつだって狙われている立場なのだ。


「陛下! 陛下っ!」
 

ミシェルは血相を変え、クロードの身体を揺する。次の瞬間、ミシェルは長い腕に抱きしめられた。


「ええっ!」
 

ミシェルはクロードの胸から顔を上げて空色の瞳で注視する。


「陛下……」
 

心の中に安堵が広がる。



< 153 / 272 >

この作品をシェア

pagetop