男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「大きな声を出すとは、新手の起こし方か?」
 

クロードの声が楽しそうだ。


「へ、陛下がお目覚めにならないからなにかあったのかと……」
 

ミシェルは安堵のあまり、クロードの腕の中にいることも気にならずにいた。それどころか泣きそうだった。


「なにをそんなに心配しているのだ? 私は健康体だ。寝ているうちに死ぬことなどない」

「健康体でもお立場上、陛下は――あっ!」
 

クロードはミシェルをぎゅっと抱きしめた。


「そんなに心配をしてくれるとは。嬉しいぞ。侍従が板についてきたのだな」
 

抱きしめられ、心地よい低音がとても耳に近い。


(ずっとこのままでいられたら……。それは出来ない……)
 

そう思って、ミシェルの気持ちが再び暗く沈んだ。


「……離してくださいっ!」


ミシェルは力を振り絞ってクロードの腕の中から逃れた。


「泣いたり、怒ったり、忙しいやつだな」
 

乱暴に腕の中から逃れたミシェルに怒りをみせることもなく、残念そうにため息を漏らすクロードだった。
 
ベッドのそばに立ち困った顔になったミシェルをクロードは片肘を付き、なにを考えているのかわからない表情で見ていた。


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