男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
事態を知ったロドルフが王城へやって来るかもしれない。手紙には昨晩のことを書いた。そして母を連れてまず叔母の元へ行き、みんなで隣国へ逃げてほしいと強くお願いした。


(どうか私のことはかまわずに行って……おじいちゃん)





「フランツ、フランツ」
 

アベルに呼ばれてミシェルはハッとなる。クロードの夕食の用意をしている最中だったことを思い出す。


「すみません!」
 

ミシェルは急いで謝る。


「ぼんやりしてどうしたんだい? 陛下がいらしたぞ」
 

アベルの言葉のあとに、扉が開きクロードが颯爽と入って来た。今日はいつもより一時間ほど遅い夕食だ。クロードは料理がのったテーブルに近づき椅子に座る。


「これを陛下に」
 

アベルはワインの瓶をミシェルに渡す。


「はい!」


(気をつけなきゃ。今は考えちゃダメ)
 

ミシェルはワインの瓶を受け取り、静かにテーブルに向かう。
 
食事の席に着いたクロードはミシェルの様子を見ていた。そこへワインの瓶を持ってミシェルが近づいてくる。
 
丁寧な仕草でグラスにワインを注ぐ。


「フランツ、そこに座れ」
 

クロードは斜め前の席を顎で示す。




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