男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「なにを考えている?」

「な、なにも考えていません」
 

つい物思いにふけってしまったミシェルの顔が一瞬こわばる。


「そうか? 思い悩んでいる顔をしているように見えるが?」
 

自分が女で、パスカルに脅されていると今話すのが一番なのかもしれない。しかしそれでは祖父と母が逃げる時間がない。パスカルとクロードから……。


(まだ話せない)
 

ミシェルは無理に笑みを浮かべた。


「陛下のお近くなので緊張をしているだけです」

「緊張などしないでいい。お前の喜怒哀楽を見るのが面白い。そのままでいろ」
 

クロードは身体を椅子の背もたれに預けくつろいだ様子でワインを飲む。


「僕はそんなに表情を出していますか?」

「ああ。出している。今まで私の周りにはお前のような者はいなかった。料理も食べろ」
 

自分の前にある肉料理をナイフとフォークで切り、ミシェルの皿に置く。


「陛下、勿体ないでございます。陛下がお召し上がりください」
 

クロードのしたことに、ミシェルは目を見張る。
 
それは少し離れたところにいるアベルが声も出せないほど驚くことだった。
 
ミシェルが来てから、アベルはクロードの知らなかった一面をたくさん見ている。
 
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