男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
クロードはなおも別の料理を取り分けており、思わずミシェルは手を出した。指がクロードの手に触れた。


(私ったらなにをしているのっ?)
 

ミシェルは急いで手を引っ込めて俯く。そんなミシェルにクロードは口元を緩ませる。


「しっかり食べているのか? 顔色も悪いし、元気もないようだ」

「はい。ちゃんといただいています……」

「ならば今も私に気にせずに口にしろ」
 

その後もクロードはミシェルに食べさせようと自ら料理を取り分けるのだった。

 


舞踏会の日から五日が経った。

ベアトリスが翌日に祖父に手紙を渡したと報告してくれ、少し胸が少し軽くなった。
 
もうすぐ約束の一週間だ。パスカルからなにもなく、あの時のことは夢だったのではないかと思いそうだった。だが引き出しの中の破られたシャツと毒の入った小瓶はちゃんとある。
 
小瓶は見るだけでも身体が震えてくる。


(おじいちゃんとお母さんは村を出たと信じて、今日陛下に告白しよう)
 

どんな罰でも受け、祖父は何とか許してもらおう。パスカルが告げた一族皆殺しだけは絶対にあってはならない。


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