男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「侍医に診せよう。顔色もまだ戻っていない」

「だ、大丈夫です」


断るミシェルを無視し、クロードは抱き上げた。まるで王子が姫を抱き上げたような姿だ。


「陛下! 下ろしてくださいっ!」

「黙っていろ。声を出すな」 
 

国王に何度も抱き上げられる侍従見習いなどいまだかつていない。


「侍医に診せて落ち着いたら説明してやる。だから今はなにも話すな」
 
クロードに抱き上げられたのはこれで三度目だ。美麗な顔を近くで見ていられなくて、ミシェルはぎゅっと目と閉じた。


(陛下の表情は柔らかい気もするけれど……これからどうなってしまうのだろう……)
 

ミシェルは早く侍医室に着くことを願った。

 


侍医室のベッドに寝かされたミシェルはマティアス侍医に喉を診てもらっていた。幸いすぐによくなるとのマティアス侍医の診たてで、クロードは安堵した。
 
パスカルの企みの決定打を待っていたため、ミシェルには大変な目に合わせてしまった。

首を絞められた時、バラの茂みから即座に出ようとしたクロードだが、ヴァ―ノンに止められたのだ。
 
クロードがパスカルに命を狙われていたのは即位の頃からで、今まで決してしっぽを出さなかった。


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