男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
パスカルを失脚させるには、この機会を利用するほかなかった。

ミシェルの状態が安堵するもので、クロードは愁眉を開いた。


「さあさ、薬をお飲みなさい。喉の痛みが和らぐ」
 

マティアス侍医は黒い粉をミシェルの口の中へ入れ水を飲ませる。とても苦い薬だが、今のミシェルにはこれからのことが心配で、それどころではない。
 
マティアス侍医の後ろにベアトリスがいる。
 
ミシェルが薬を飲むのを見守ったマティアス侍医は振り返り、クロードに頭を下げる。


「ニ、三日でよくなるかと思われます」

「わかった。では明日また診るように」
 

クロードはベッドの上に腰掛けるミシェルに近づき、驚くことにまだ抱き上げた。


「へ、陛下っ、歩けます!」

「お前は黙っていろ」
 

だいぶ顔色も戻っており、ひとりで歩ける状態なのにクロードにお姫様抱っこをされてミシェルの頬は色づく。


「こうしたほうがお前の顔の血色がよくなる」
 

クロードは当惑しているミシェルに微笑み、扉へ向かう。ミシェルはクロードの肩越しにベアトリスと目が合った。ベアトリスはにっこり微笑んでいた。



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