男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「あの、陛下」
 

話すとクロードの宝石のような瞳でジロリと見られ、ミシェルは押し黙る。
 
クロードは私室に向かっていた。

ところどころに立っている衛兵らも国王が侍従見習いを抱き上げて歩いていると驚いていたが、顔に出すことはせずにいる。

私室の扉が衛兵によって開けられると、中にいたアベルがふたりを見てホッとしたような顔をして頭を下げた。
 
ミシェルにはどうしてアベルの顔がそんな風になるのかわからない。


「陛下、ご無事で」

 
その一言で、ミシェルは今回の件をアベルも観取していたのだと悟る。


「茶が飲みたい。ミシェルの分もだ。談話室にいる」

「かしこまりました」
 

アベルはうやうやしく頭をさげた。
 
談話室に入り、ミシェルはようやくソファに座らされた。クロードが隣に腰を掛けると、ミシェルは即座にソファから降りて床に膝をつく。


「陛下、騙してもうしわけありません! 祖父と家族はお助け下さいっ!」

「知っていたと言っただろう? 膝をつく必要はない。ここへ来い。それから、ロドルフと母親は別の場所で安全に過ごしている」
 

それでも動かないでいるミシェルに業を煮やしたクロードは立ち上がり、彼女を無理やりソファに座らせた。


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