男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
それから三日後、ミシェルの熱が下がり体調もよくなった。空いている時間をみては、クロードはミシェルの部屋を訪れていた。

 
その様子に側近の者たちは笑みを浮かべるが、ミシェルにとっては困惑するばかりだ。
 
夕方、熱が下がりやることがないミシェルは、退屈しのぎにクロードから借りた本を読んでいた。

侍従見習いを辞めるミシェルには必要がないのだが。

そこへ扉が叩かれ、アベルが顔を覗かせる。


「アベル侍従」
 

ミシェルは椅子から立ってアベルを出迎える。


「体調はどうだい?」

「もう大丈夫です。ひとりで陛下のお世話をさせてしまいすみません……」

「いやいや、陛下はもともと自分のことは自分でするお方だ。私を気遣ってくださっているよ」 
 

アベルはすまなそうなミシェルに笑いかける。


「ミシェル、陛下が一緒に夕食をとのことだよ」

「えっ、あ、あの……」
 

ミシェルは戸惑い、アベルと目が合うと顔を赤らませた。


「食事の前にまずやることがあるんだよ」

「やることですか……?」

「付いてきなさい」
 

アベルは先に立ち部屋を出て廊下を奥へ進む。ミシェルはキョロキョロしながら付いて行く。侍従部屋は階段から近く、二階のその先へは足を踏み入れたことがない。


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