男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
たくさんある扉のひとつをアベルは叩いて開ける。促されて入ったミシェルは「あっ!」と驚く。

 
談話室のような部屋のソファにイヴォンヌが座り、侍女ふたりが控えていたからだ。

イヴォンヌはミシェルが入ってきて立ち上がると、親しみを込めた笑顔で近づいてくる。


「やはり女の子でしたのね? 男の子にしてはお肌が綺麗すぎると思っていましたの」
 

そういうイヴォンヌにミシェルは困惑しながら謝る。


「もうしわけありません。フランツではなくミシェルといいます」
 

ミシェルが頭を下げたところでアベルが口を開く。


「イヴォンヌさまがお前にドレスを選んできてくれたんだ」

「ドレスを……? 私が着るのですか……?」
 

よく見ればミシェルの瞳と同じような水色のフリルとレースがたっぷりのドレスを、ふたりの侍女が腕にかけて待っていた。


「ええ。陛下に頼まれました。さあ、お支度をしましょう」
 

イヴォンヌはにっこり笑う。


「陛下に……」
 

絶対に着ることのないと思っていた、夢のようなドレスだった。


(これを着て陛下とお食事……)
 
ミシェルは一度も身につけたことのない高価なドレスに触れるのも怖い。


「それでは後で迎えに来るから」


困惑しているミシェルに声をかけ、アベルが出て行った。


「さあ、着替えましょう」
 
イヴォンヌはミシェルを促した。


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