男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「では行こう。陛下がお待ちだ」

 
ミシェルはアベルに頷き、後ろにいるイヴォンヌを振りかえる。


「イヴォンヌさま、行きましょう」
 

着替えを手伝ってくれたイヴォンヌも当然一緒だと思ったミシェルだったが――。


「いいえ。私は呼ばれていません。これで帰りますわ」
 

首を横に振って微笑むイヴォンヌは寂しそうに見えた。


(たしかイヴォンヌさまは陛下のことを……それなのに私の支度を手伝ってくれて……)
 

ミシェルは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「……イヴォンヌさま、ありがとうございました」
 

クロードに聞かずしてミシェルが食事に誘うことはできない。ミシェルは丁寧にお辞儀をしてアベルのあと部屋を出た。


「イヴォンヌさまのことは気にすることはない」
 

少し歩き始めてからアベルが言う。


「……お手伝いだけさせてしまいました。てっきりご一緒するものと……」
 

自分の支度だけを手伝いに王城へ足を運んだイヴォンヌの気持ちを考えると、クロードとの食事に気が進まなくなる。

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