男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「陛下はお前とふたりだけの食事をご所望だ。そんな顔をしてはダメだよ。せっかくの陛下とのお食事だ」

「はい……」
 

イヴォンヌに気を取られて、これからクロードとふたりきりの食事だということを意識していなかった。

ふたりだけだと思うとミシェルの心臓はドキドキし始めてくる。
 
ミシェルの部屋を通り過ぎ、いつものように三階のクロードの私室へ向かう。
 
階段ではつま先まで隠れるほどのドレスを踏みそうになって堪えるミシェルだ。


(転ばないでよかった……貴族の令嬢たちは不便なドレスで毎日過ごしているのね)
 

クロードの私室に一歩近づくたびに脚の震えが大きくなる。
 
 

私室の前に立っている衛兵ふたりはシルバーブロンドの令嬢は誰なんだ?と考えながら扉を開ける。
 
彼らは侍従見習いのフランツだとわかっていないようだ。それほど今のミシェルは変身していた。

ミシェルが入室すると、深みのある藍色のジュストコールを身につけたクロードがソファから立ち上がった。


「本当にミシェルか? 信じられないくらい美しい」

「はい。陛下……」
 

ミシェルは膝を折り、返事をすると視線を下げた。面映ゆくてクロードの目をまともに見られないミシェルだ。
 
茶色のかつらをかぶり、偽りの村娘姿を見せたことはあるが、変装をしていない素の自分を初めてさらし、ミシェルは気恥ずかしい。


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