男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ミシェル、あまり覗き込むと落ちる」


背後からクロードの腕がミシェルのウエストに回り抱きしめられる。力強く抱きしめられてミシェルの身体が予想もしていなかったことにビクッと跳ねる。


「へ、陛下っ、落ちませんから……」
 

心臓がドクンドクンと波打ち始め、クロードに伝わってしまいそうだ。


「ミシェル、私が渡した本のダンスの章に目を通したかい?」

「は、はい」
 

耳元で心地よい低音の声がして、クラクラしてしまいそうだ。


「では、私と踊ってくれるか? ミシェル」
 

クロードはミシェルを自分のほうへ振り向かせてからその場で片膝をつきダンスに誘った。


「よ、読んだだけで踊れません……」
 

部屋でワルツを聴きながら踊ったあの時はでたらめにすぎない。


「私に任せておけば大丈夫だ」
 

クロードは立ち上がり、あわあわしているミシェルの手を取り談話室へ戻る。そこからでも十分素敵な音色は聴こえた。


「私だけを見るんだ」
 

ミシェルは緊張しながらクロードにホールドされる。そうされると姿勢がよくなってクロードの顔に空色の瞳が向く。

陛下の黒い瞳は優しくミシェルを見つめていた。



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