男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
ミシェルも驚き、息を呑んでアベルの次の言葉を待つ。


「馬車の中におられたので、御者の怪我ですみましたとのことです。しかし恐ろしい目に遭い、イヴォンヌさまは床につかれたようです」
 

ミシェルは自分のために王城へ来てそんな目に遭ってしまったイヴォンヌが気懸りだ。


「陛下……心配でございます」

「ああ……アベル、執務室にヴァ―ノンを呼べ。私もすぐに行く」
 

アベルは頭を下げて出て行った。


「ミシェル、イヴォンヌは心配いらない。今日はここまでだ。ゆっくり休め」
 

クロードはミシェルの額にキスを落とし、一緒に扉へ向かった。


部屋に戻ったミシェルはイヴォンヌが心配で、なにも手につかない。しばらくしてアベルがやって来た。


「陛下はブノア団長とマティアス侍医と共にブラッサンス公爵邸へ行ったよ」

「町は安全だと思っていたのですが……」
 

ミシェルは不安そうな表情だ。


「貴族はよく狙われるんだよ。しかし、陛下が即位してからは警備も強化され、そういった輩は我が国から出て行ったと思ったんだが」

「イヴォンヌさまにお怪我がなくてよかったです。陛下がお見舞いに行かれたら、イヴォンヌさまは喜びますね」
 

ミシェルは小さく微笑む。そんな彼女にアベルは心の中でため息を吐く。


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