男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
腕が背後から掴まれ、グッと引き寄せられる。


「はぁ……お前は動かないでいい」
 

後ろから抱き込まれるようにして、ため息がミシェルの耳に触れ、胸がドキドキしてきた。


「で、でも……」
 

階段のところに衛兵が立っている。こんなところを見られたら大変だと、ミシェルはクロードから離れた。


「黙れ。いいから行くぞ」
 

クロードはミシェルの手をがっしり握って歩き始めた。
 
ミシェルが女だということを衛兵は知らない。男同士が手を繋いでいることになる。


(陛下ったら……手を離してくれないと……陛下は男色なのかと噂がたってしまうかもしれない……)
 

何気なく手を抜こうとしてもダメだった。俯きながらクロードの半歩後ろを歩いたミシェルだった。

 

バラ園の奥まったところにある一画に到着した時、料理人や侍女がテーブルに料理を並べている最中だった。
 
肉と野菜が挟まったパンやパイ生地に包まれたトロリとしたチーズ料理など、美味しそうな料理がテーブルの上に並んでいる。
 
クロード自ら、ミシェルのために椅子を引く。それを目にした周りの者は目を見張る。アベルの姿は見えない。


(絶対に男が好きなのだと噂されそう……)
 

ミシェルが心配する中、クロードはまったく気にしていない様子。
 
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