男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「おじいちゃん!」

(どうしてここに……?)
 

ミシェルはオロオロしながらロドルフの元へ行く。


「ロドルフ、立っていい。ミシェルは椅子に座りなさい」
 
クロードはアベルに頷く。

アベルはミシェルが先ほどまで座っていた椅子の後ろで彼女を待つ。ミシェルは仕方なく席に戻り、椅子に座った。


「お前を呼んだのは叱責するためではない。土地の件だ」
 
いつの間にかヴァ―ノンがおり、立ち上がったロドルフに近づきくるくると丸められた書状を開いて手渡す。


「こ、これは……」
 

書状の内容にロドルフは驚愕した顔になる。


「私が退位した時にすでにサインはしてあったのだ。お前がここを辞める時に渡す手はずになっていた。たとえ一ヵ月間まっとうできなくてもな」
 

クロードの言葉に良心の呵責に耐えきれないロドルフの目に涙が光る。


「……お気持ちだけを受け取らせてください」
 

嗚咽が出そうになるのを堪えるロドルフは書状をヴァ―ノンに渡すと口を開く。


「私は陛下を欺いたのです。首を跳ねられる覚悟でまいりました」
 

再びロドルフは地面に膝をついた。




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