男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ふたりって……? きっとクロードさまのご友人だから言葉の綾よね」
ミシェルは閉じられた扉をみて呟き、刺繍の道具を膝に置く。
クレマン夫人の宿題はイヴォンヌなら二時間もあれば終わってしまうだろうが、習いたてのミシェルは一晩かかっても出来るかわからない。
指の血も止まっている。
ミシェルは白い布にピンク色の糸でひと針ひと針、丁寧に刺していった。
陽が落ち、ランプが灯される。
今夜のクロードは出かけており、ミシェルひとりの夕食だった。食事を終えたミシェルはランプの灯りの元、刺繍をしていた。
扉が叩かれアベルが入って来た。お茶と焼き菓子がトレーに乗っている。
「アベル侍従、お茶を持ってきてくださったんですか。ありがとうございます」
「侍女からずっと刺繍をしているとのことだったので。少しお休みください」
ミシェルが侍従見習いを辞めてから、アベルは敬語になっていた。
アベルはテーブルの隅でポットからカップにお茶を注ぎ、焼き菓子と共に刺繍の邪魔にならないように置く。
「慣れない刺繍は大変でございましょう」
「はい。全然進まなくて……」
「おおっ、指が傷だらけではありませんか」
バラの棘にも勝る、刺繍で負傷した指にアベルは驚く。
ミシェルは閉じられた扉をみて呟き、刺繍の道具を膝に置く。
クレマン夫人の宿題はイヴォンヌなら二時間もあれば終わってしまうだろうが、習いたてのミシェルは一晩かかっても出来るかわからない。
指の血も止まっている。
ミシェルは白い布にピンク色の糸でひと針ひと針、丁寧に刺していった。
陽が落ち、ランプが灯される。
今夜のクロードは出かけており、ミシェルひとりの夕食だった。食事を終えたミシェルはランプの灯りの元、刺繍をしていた。
扉が叩かれアベルが入って来た。お茶と焼き菓子がトレーに乗っている。
「アベル侍従、お茶を持ってきてくださったんですか。ありがとうございます」
「侍女からずっと刺繍をしているとのことだったので。少しお休みください」
ミシェルが侍従見習いを辞めてから、アベルは敬語になっていた。
アベルはテーブルの隅でポットからカップにお茶を注ぎ、焼き菓子と共に刺繍の邪魔にならないように置く。
「慣れない刺繍は大変でございましょう」
「はい。全然進まなくて……」
「おおっ、指が傷だらけではありませんか」
バラの棘にも勝る、刺繍で負傷した指にアベルは驚く。