男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
翌日、クレマン夫人がやって来て刺繍のレッスンを終わらせた午後、クロードからの伝言を受けたミシェルはバラ園に向かおうと部屋を出た。

バラ園に向かう足取りは弾んでいる。
 
先日の水色のドレスの裾をひるがえし、階段を下りる。

もう少しで一階に足が着くところで話し声が聞こえてきた。ミシェルから見えない角を曲がったところにいるようだ。


「陛下、昨晩はかなり遅かったみたい。やっぱりお妃さまになるのはイヴォンヌさまよね」
 

イヴォンヌ名前が出てミシェルの足が止まる。
 
侍女三人が立ち話をしていた。侍女たちはミシェルに気づかずに話を続ける。


「うんうん。おふたりが並ぶと絵に描いたように美しいし。お妃さまになるには教養も家柄も必要だわ」

「ミシェルさまも美しいけれど、お妃さまとしては失格よね」

「ええ。育ちが悪いもの」
 

ミシェルは彼女たちの話を聞きたくなかったが、その場を動けなかった。


「どうして陛下はミシェルさまなのかしら」

「あのシルバーブロンドの髪じゃない? もしかしたら魔女だったりして。魔法をかけて陛下を虜にしたのよ」
 

侍女たちが自分のことをどう思っているのかを知ってしまい、ミシェルの心臓がズキッと痛んだ。


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