男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
(快く迎えてくれているとは思わなかったけれど……)


 
茫然となっていると――。


「ミシェル?」
 
背後からクロードの声がした。ミシェルはビクッと肩を跳ねらせてから振り向く。

階段を下りてくるクロードがいた。グレーのジュストコールの凛とした姿だ。後ろにアベルもいる。


「立ち止まってどうしたんだ?」

「ぁ……いいえ。なんでもないです」
 

クロードは階段を下りてミシェルの隣に立ち抱き寄せると、こめかみに唇を落とす。


「針傷はどうだ?」
 

昨日のことはアベルが報告していた。
 
クロードに左手を持ち上げられ、指先を見られる。昨晩巻いた布は外しており、数か所の傷跡はそれほど目立たない。
 
その指先にクロードはそっと口づけた。


「針を刺さないように気を付けてくれ。お前が怪我をするくらいなら結婚式の風習も撤廃する」

「そんなっ! そんなことはダメです。大丈夫ですから」
 

驚いて首を左右に強く振り、長年の風習を失くさないようにミシェルは慌てて言う。


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