男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
その真紅のバラの茎を短めに切り、ミシェルの髪にそっと差し入れる。

 
シルバーブロンドの髪に真紅が映えて、その美しさにクロードは目を細めるが、ミシェルの表情が心に引っかかる。


「ミシェル、どうして不安そうな顔をしている?」

「そ、そんなことないです。クロードさま、ありがとうございます」
 

ミシェルは微笑み、手を髪に飾られた真紅のバラへ動かす。外れないようにふんわりと触れる。


「さては、勉強ばかりで疲れたか?」
 

ミシェルを見つめるクロードの目は気遣わしげだ。その気持ちだけでミシェルは胸がいっぱいになる。


「いいえ。疲れていません。こうしてクロードさまと息抜きができていますから」

「ミシェル、嘘を吐くのではない。そうだな……私たちには気分転換が必要だ。明日、町へ遊びに行こう」

「えっ? 本当にっ?」
 

町と聞いてミシェルの顔が途端に明るくなる。そんな彼女にクロードは笑う。


「ああ。出かけよう。お前の髪は目立つからマーサの店に寄って、茶色のかつらをつけるといい」

「はい! 楽しみです。マーサにも会いたかったんです。あ、クロードさまが国王陛下だと言うことは……?」
 

マーサはクロードを伯爵の子息だと思っている。




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