男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「それはまだ言わないでおこう」

「わかりました。楽しみです」
 

ミシェルは茶目っ気たっぷりに笑った。



翌日、ミシェルは衣裳を前にして困っていた。


「豪華すぎるドレスばかり……」
 

数日前から少しずつ王室御用達の仕立て屋からドレスが運ばれている。だがそれは王城ならばごく普通のドレスだが、町では浮いてしまうだろう。
 
馬車ではなく今日はクロードの馬で町へ行く。以前のミシェルとクロードに戻って町で楽しむつもりだった。
 
唯一、家から持ってきた普段来ていたドレスはマーサの店に置いてある。
 
ミシェルは煌びやかなドレスから目を離し、隣の引き出しを開けた。

 

待ち合わせの中庭へミシェルは走った。


(悩んでいたら遅くなっちゃった……)
 

そう思ってもまだ約束までには十分ほどある。しかし、ミシェルはクロードを待たせたくなかった。
 
王城へ初めてきた時の格好をしているミシェルは走っていた。


(ズボンに低い靴というのは走りやすいわね)
 

クロードより先に待ち合わせの場所へ到着出来ると思いながら、中庭へ続く角を曲がった。


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