男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
誰もいないと思っていたミシェルだが、すでにクロードが黒馬の側に立っており背を向けてヴァ―ノンと話をしていた。

近づく足音でクロードが振り返った。

男装のミシェルを見て、クロードは絶句した顔になる。隣にいるヴァ―ノンもだ。


「まさか、その格好でくるとは思わなかったな」

「おかしい……ですか……? 作っていただいたドレスは相応しくない気がして……」
 

ミシェルは自分の姿を見下ろしてみる。 


(クロードさまは着飾った自分と出かけたかったの……?)


「いや、なかなか似合うが、マーサの店で着替えるだろうな? 町ではあの時のミシェルがみたい。さあ、馬に乗ろう」

「え? 今日はこのままで過ごそうかなと……」
 

本当は着替えるつもりだったが、少し冗談を言ってみたかった。

途端にクロードの眉が上がる。


「だめだ。私はあの時のミシェルが見たい」


即座に却下されて、ミシェルはクスクスッと笑った。


「ご安心ください。着替えますから」

「ミシェル、からかったのか。まったく可愛いやつだ」
 

クロードはミシェルの頭に手を置いてくしゃくしゃっと髪を乱した。


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