男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
楽しそうなふたりにそばで聞いていたヴァ―ノンはあてられた。

今日は遠くから見守るヴァ―ノンだった。
 
黒馬の背に軽々と乗ったクロードはミシェルに手を差し出す。明らかに前に座らそうとしている。


「私は男の格好なので、クロードさまの後ろに」

「前でかまわない」

「でも……」
 

男が男を抱いた形で馬に乗るのを見られたらいい笑いものだ。しかしクロードはかまわずミシェルを自分の前に座らせた。
 
背後からクロードに抱かれるようにして座るミシェルの心臓は町に着くまでドキドキ暴れていた。

 

マーサの店に着いたのはお昼前だった。


「ミシェルじゃないかっ!」
 
入り口に姿を現したミシェルに気づいたマーサは嬉しそうに出迎えた。後ろにいるクロードを見て、マーサは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。


「あら、ふたりは……?」
 

女の子のミシェルならわかるが、今は男装中だ。マーサは首を傾げる。


「あ! ちょっとあって……クロードさまは知っているの。着替えさせてください」


(別々に入ればよかった……マーサ、変な風に思っていない……?)


「マーサ、腹が空いている。食事をくれないか」
 

クロードはマーサに考える暇を与えずに昼食を頼む。


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