男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「活気があっていいですね。あ! お菓子を買っていいですか?」

「もちろんだ。ミシェル、今日は髪飾りを買わせてくれるだろう?」
 

前に自分には高価だからと高級髪飾り店へ入らなかった時のことをクロードは持ち出した。


「髪飾りなら――」
 

衣裳部屋にたくさんあるからいらないと言おうとしたのだが、クロードに手を掴まれ強引に立派な店構えの扉へ進まされたミシェルだった。
 
店に入ったクロードは店内にあるものすべてを買いそうな勢いだった。ミシェルの髪にあててはなんでも似合うと目じりを下げる。


「店主、これと、あれ、それももらうぞ。あとは――」

「クロードさまっ、もういいですっ。十分ですから」
 

ミシェルは慌ててクロードを止める。
 
王室御用達のものではないが、どれも宝石が付けられた美しい髪飾りで、かなり根が張るものだ。


「お前は欲がないな」
 

クロードは苦笑いをし、形のいい唇からため息が漏れる。


「私はこうしてふたりでいられるだけで幸せです」
 

そう言ってしまってから、店主に聞かれていることに気づき、ミシェルの顔が真っ赤になる。
 
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