男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
細身に口ひげを蓄えた店主はそんなミシェルに微笑む。


「とても可愛らしい娘さんだ」
 
ミシェルを褒める店主に同意するクロードだった。
 
店を出て歩いていたふたりの背後から困惑気味の女性の声がした。


「クロード……さま……?」
 

少し後ろに純白の日傘をさしたイヴォンヌが驚いた顔で立っていた。彼女の周りには付き添いの侍女や護衛もいる。


「イヴォンヌさま」
 

偶然の出会いにミシェルが驚いていると、イヴォンヌがふたりの前へやってきて優雅にお辞儀をする。


「まさかこのようなところでお会いするとは思いませんでしたわ。まあ、ご一緒にいらっしゃるのはミシェルさま」
 

茶色のかつらをかぶっているミシェルに初めて気づいたイヴォンヌは驚いている。


「お忍びでいらっしゃっているのですね」
 

イヴォンヌはすぐに状況を把握した。

「クロードさま、先日の夜会ではありがとうございました。本日はバスティア公爵家の夜会でございますね。ご出席は……?」

「顔だけ出す予定でいる。ではイヴォンヌ、失礼する」
 

クロードは簡単に話し、ミシェルの腰に手を置いて歩き出した。


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