男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
考えを読み取ろうと黒い瞳が空色の瞳をじっと見つめる。


「母がこの花は私みたいだと言っていたのを思い出したんです」

「この花がお前みたいだと?」
 

クロードはミシェルのほうへ顔を乗り出し、花の香りを吸い込む。


「たしかにお前はこの花のような香りがする。バラでもなく、ユリでもない。心が癒されるような香りだな。そうだ。この花を中庭にたくさん咲かすようにさせよう」

「王城でも見られるのですね! 嬉しいです!」

「すぐに自生するだろう」
 

笑みを深めたミシェルにクロードはキスをした。

 

翌日の午後、ミシェルは東屋でお茶のマナーレッスンを受けていた。


「そうでございます。カップを持つ手は優雅に、優雅に」
 

シャプリエ公爵夫人は三十代と若いが、王室と遠縁ということもあり、ミシェルのマナー教師に抜擢された人物だ。


「ミシェルさまは呑み込みがお早い方ですわね」

「いえ、そんなことは……刺繍や他のことはまだまだで」

ミシェルは美しいシャプリエ公爵夫人に褒められて頬を赤くする。


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